マッハ軒

ホワイトヘッドとか、鑑賞した作品についてとか

『過程と実在』を読む(休止中)

ホワイトヘッド『過程と実在』〈第32回〉2-2

延長的連続体(extensive continiuum) 延長的連続体と呼ばれる概念には、ホワイトヘッドにおける前期から中期にかけての仕事、殊に相対性理論に代表される物理学に従事していたという事情が意味を持っているらしい。しかし私には物理学の素養が著しく欠けてお…

ホワイトヘッド『過程と実在』〈第31回〉2-1-5~7

引き続き、第二部第一章から。 特殊と普遍の調停 大きすぎるテーマではあるが、ホワイトッドが実際強調する問題であるのだから仕方がない。まずホワイトヘッドによる主張をしつこい程に確認しよう。最も肝要であるアイデアは、ある現実的実質が他の現実的実…

ホワイトヘッド『過程と実在』〈第30回〉2-1-1~4

時間というのは恐ろしいもので、なんやかんや個人的な用事を片付けていたらふた月近く更新できませんでしたね。頑張ります。 今回から第二部に入って、より具体的な議論になっていくはず。特に「事実と形相(fact and form)」と題された第一章はかなり重要な…

ホワイトヘッド『過程と実在』〈第29回〉1-3-4

伝統的認識論の部分的否認と現象学 今回でようやっと第一部が終わります。ここからは夏休みも近いし少しずつペースアップを望みたいところ。今回はめちゃめちゃ短いので現象学の話も絡めてみます。 まず引用から ここで粗描された宇宙論の構図では、哲学の伝…

ホワイトヘッド『過程と実在』〈第28回〉1-3-3

連続性の生成 今回は短いのでサクッと。しかしホワイトヘッドにとっての根本的なアイデアが現れているともいえるので結構重要な箇所かもしれない。 前々回から、思弁的構図のもつ派生的諸観念について見てきたが、今回は「生成」という概念に対するホワイト…

ホワイトヘッド『過程と実在』〈第27回〉1-3-2

社会的秩序(social order) 第二節では、引き続き派生的な諸概念についての説明がなされる。今回は、殊に結合体が享受するとされる(但し必然的にではないだろうが)二つの性格についてまとめたい。 まずは「社会的秩序」からみていこう。 結合体が「社会的秩…

ホワイトヘッド『過程と実在』〈第26回〉1-3-1

欲求(apetition)と創造性の制約、永遠的客体の謎 今回から第一部の第三章に(ようやく)入ります。この章はホワイトヘッドが言うには「派生的概念(some derivative notions)」の紹介のようですが、今回扱う「欲求(apetition)」*1という概念をはじめとして重…

ホワイトヘッド『過程と実在』〈第25回〉1-2-4 まとめ回(?)決定性の謎

範疇的拘束の列挙も終わり、第二章の最後に当る第四節では、「予備的な注釈」がなされている。とはいえ、殊に前半部分はこれまでの説明の範疇に付言する形でホワイトヘッド哲学の大枠が確認される箇所となっている。 相対性と新しさへの前進 第四の説明と第…

ホワイトヘッド『過程と実在』〈第24回〉1-2-3 範疇的拘束ⅸ

自由と決定性 最後となる第九の範疇は、自由と決定性(freedom and determination)に関して以下のような説明がなされる。 各々一つの(individual)現実的実質の合生(concrescence)は、内的には決定されているものの外的には自由である。 前者の内的な決定(det…

ホワイトヘッド『過程と実在』〈第23回〉1-2-3 範疇的拘束ⅶ~ⅷ

主体的調和(subjective harmony) 主体的調和の範疇と題された第七の範疇は以下のような記述である。 概念的感じの価値づけ(valuation)は、その感じが、コントラストを持ちまた主体的指向と合致(congruent) するような【実質の】構成要素となるように適合させ…

ホワイトヘッド『過程と実在』〈第22回〉1-2-3 範疇的拘束ⅵ

変異(transumutation)とはどういうことか<謎!> 変異の範疇と題される第六の範疇は以下のように始まる。 ある同一の概念的感じが、現実世界における諸現実的実質の相互に類似する(analogous)物的感じから完全な形で(impartialy)抱握主体に派生する場合、そ…

ホワイトヘッド『過程と実在』〈第21回〉1-2-3 範疇的拘束ⅳ~ⅴ

現実的実質の「再生」と「差異」 概念的価値づけ(conceptual valuation)と題された第四の範疇は、以下の説明を付す。 各物的感じに由来する純粋な概念的感じが得られ、 この概念的感じの与件は、当の物的に感じられた現実的実質ないし結合体の限定性(definit…

ホワイトヘッド『過程と実在』〈第20回〉1-2-3 範疇的拘束ⅰ~ⅲ

主体的統一性の範疇と両立可能性 九つある範疇的拘束は、これまでの説明の範疇の内実をより具体的にまとめている。以降参照されることが多いのも、ここで挙げられる諸範疇である。 第一の範疇であるところの主体的統一性(subjective unity)の範疇は、説明の…

ホワイトヘッド『過程と実在』〈第19回〉1-2-2 説明の範疇xxv~xxvii

現実的実質の「満足(satisfaction)」 説明の範疇の列挙も終わりに差し掛かったところで、現実的実質自身の「最終相(final phase)」が語られる。以下第二十五の範疇を引用する。 現実的実質を構成する合生の過程における最終相は、一つの完全に決定された複合…

ホワイトヘッド『過程と実在』〈第18回〉1-2-2 説明の範疇xxiii,xxiv

直接性と主体性 前回見たような「機能」に関する記述から導かれて、第二十三の説明では前回触れた「リアルな内的構造」の意味が開示される。この「自己自身に関して機能すること」、すなわち自己の中に他の実質を招き入れる形で自己を形成していくことこそが…

ホワイトヘッド『過程と実在』〈第17回〉1-2-2 説明の範疇xix~xxii

「機能する(to function)」ということの意義 第十九の説明では現実的実質と永遠的客体の二つの概念こそが根本的であり、他のコントラストや命題といった実質はその二つの中間的性質を持ち、その二つが「いかに相互に結び付いているか」*1を示していることが…

ホワイトヘッド『過程と実在』〈第16回〉1-2-2 説明の範疇xviii

存在論的原理(ontological principle) 第十八の説明は最も長い。したがってここでは幾らか細分して注釈していくことになろう。ここでは最初に、「存在論的原理」なるものが導入される。*1 生成の過程が、任意の特殊な事例において従うすべての条件は、その根…

ホワイトヘッド『過程と実在』〈第15回〉1-2-2 説明の範疇xvii

諸実質の「コントラスト(contrast)」 これまでの数回に渡って、当ブログではホワイトヘッドの用いる「統一(unity)性」という概念の持ちうる多義性を見てきたということができよう。まず第一にそれはある単一の現実的実質の内におけるいわば「主体的な統一性…

ホワイトヘッド『過程と実在』〈第14回〉1-2-2 説明の範疇xv,xvi

命題(proposition)の機能 前回は、結合体という概念において考えられる、諸現実的実質(諸多性)の統一が、当の諸実質間の相互抱握と調和によってなされているのではないかという仮説を検討した。ここで問題となるであろうことは、その統一がどのように、具…

ホワイトヘッド『過程と実在』〈第13回〉1-2-2 説明の範疇xiv

結合体と現実的実質 前回まで(第十三の説明まで)は主に現実的実質と抱握、そして永遠的客体についての説明であったといえるが、第十四の説明以降はより複雑な、あるいは中間的ともいえる概念が登場する。まず語られるのは「結合体(nexus)」についてである…

ホワイトヘッド『過程と実在』〈第12回〉1-2-2 説明の範疇ⅷ~xiii

現実的実質の二つの記述 第八の説明は以下のようになされる。 二つの記述が、現実的実質には要求されるということ。(a)一つは他の現実的実質の生成において、「客体化(objectification)」されるためのそのpotentialityへと分析するものであり、(b)今一つは、…

ホワイトヘッド『過程と実在』〈第11回〉1-2-2 説明の範疇Ⅴ~Ⅶ

Ⅴ~Ⅵ(前半)宇宙と現実の同一性を巡って まず前半部分 どのような二つの現実的実質も同一の宇宙からは決して生じないということ。もっとも、二つの宇宙間の相違は、一方の宇宙に含まれ他方に含まれていないいくつかの現実的実質のうちに、そして各現実的実…

ホワイトヘッド『過程と実在』〈第10回〉1-2-2 「説明の範疇」ⅰ~ⅳ

説明の範疇、27個、見ていきます。今回で全部追い切れるとは思ってませんが、まあじっくりやっていきたいです。 creatureとしての現実的契機 内容からして、説明の範疇は幾らかのまとまりに分けられると思う。もちろんそれらは相互に連関しているのであろう…

ホワイトヘッド『過程と実在』〈第9回〉1-2-2 「窮極的なものの範疇」とか

第二節は、構図の中身としてホワイトヘッドが掲げるところの「範疇」(categories)が明確に示される箇所である。ホワイトヘッドは殊に、これら諸範疇の「適用可能性」(applicability)と「十全性」(adequecy)をここでも強調しており、その意味は、(これまでの…

ホワイトヘッド『過程と実在』〈第8回〉1-2-1

範疇の構図(the categoreal scheme)と題される第一部第二章は、有機体の哲学における「観念の素描」(sketch)であることがまず確認されねばならないだろう。序文でも、第一部における「要約的陳述」は、実際に経験的な諸問題を検討し、そこに整合性を見ていく…

ホワイトヘッド『過程と実在』〈第7回〉1-1-6

「目的」と「選択」、その過程としての現実 この節はホワイトヘッド哲学全体にとって重要となるかもしれないモチーフが提出される。それは端的に言えば経験される現実世界における「目的」に適った「選択」、あるいは「解釈」といったものであるといえよう。…

ホワイトヘッド『過程と実在』〈第6回〉1-1-5

言語表現の欠陥と命題 第五節の主題は、言語という表現*1について、特にその形而上学における「道具」としての不完全性であると解されるだろう。ホワイトヘッドは、「経験された事実についての人類の一般的合意が、言語に最もよく表現されること」を認めたう…

ホワイトヘッド『過程と実在』〈第5回〉1-1-4

この節は主に、科学と哲学との関係、あるいは際について語られる個所となっている。しかしながら私としては、ここにおけるホワイトヘッドの主張には当初少しビビってしまった。それは「そんなことまで言えてしまってよいのか?」といったたぐいの疑念であっ…

ホワイトヘッド『過程と実在』〈第4回〉1-1-3

第三節でも、哲学という手法そのものについてのホワイトヘッドの省察が続々とくわえられていく。第二節でも見たように、哲学的な学説は「テスト」、つまり現実との適応可能性の審査によって順次改訂され得るものであり、そこにおいてこそ一般的真理体系とし…

ホワイトヘッド『過程と実在』〈第3回〉1-1-2

哲学者は、前回見たような思弁的構図、つまり十全で不可避的に我々の経験に例示されるところの形而上学的原理の究極的な定式化を「決して望むことはできない」のだという主張から、第二節は開始される。そしてその不可能性の原因としてホワイトヘッドは「洞…