マッハ軒

ホワイトヘッドとか、鑑賞した作品についてとか

庵野秀明『シン・仮面ライダー』(2023)感想

マスクを外して観に行ってみた。途中、マスクを付けていないのに口にかけ直すような仕草をしてしまい、身体の拡張(?)を感じるなどした。それはさておき。 まあまあ面白かった。個人的にウルトラマンや怪獣特撮に比べて仮面ライダーは詳しくないということ…

客体化についての覚書と、決断との関係について少し

客体化について、それが最も原始的であまねく全ての契機の生成に取って根源的なものとしての「物的感取physical feeling」と関連させて述べられているところをまとめる。 まずこの物的感じは、ある契機がある契機を抱握することである。これが全ての契機に取…

北野武『BROTHER』(2000)感想

北野作品はまあまあ見ている。最後に見たのが確か『DOLLS』か『キッズ・リターン』のどちらかだったので、久しぶりにバイオレンスな北野作品を見たことになる。 結論から言うと良かった。良かったけど『その男』や『ソナチネ』のほうが良かった。この二作品…

ある契機の決断によって他の契機にとっての与件が供されること(追記1/30)

今回は重要な箇所を長めに訳して、たしかに決断によって与件が供されるという事態についてホワイトヘッドが語っていることを確認する。 【ひとつの現実的存在を構成する四つの段階the four stages constitutive of an actual entityについて】それらは与件、…

フランク・キャプラ『毒薬と老嬢 』(1944)感想

戯曲ではなくキャプラが脚色した映画の方を観た。これはおもしろい。新婚旅行を控えた主人公が叔母の家に挨拶に行くのだが、その家を取り巻く環境がなんとも狂気的で、それでいて当人らはその狂気など気にもせず幸福そうにしているのがおかしい。主人公はそ…

前回の修正と補足

前回、私は「決断は合生過程に位置づけられないこと」を強調したが、それは不正確だ。ホワイトヘッドは決断を合生過程に位置づけて語ることもしばしばある。このことはホワイトヘッドが決断について二種類あることを主張していたことに関連する。したがって…

決断概念について~決断は合生過程には位置づけられないこと~

ホワイトヘッド研究において、決断概念がしっかりと定式化されることは少ない。他の研究者がどのようにその概念を扱っており、また扱っていないかの比較検討は必要な作業だけれど、このブログではまず内容的な部分を明らかにする方を優先する。さしあたって…

原恵一『かがみの孤城』(2022)感想

さっき映画館で見てきた。お客さんの入りはまあまあ、というか思ったより入っていた。中高生や子連れの人が多い感じ。監督の原恵一さんといえば『クレヨンしんちゃん』の映画シリーズを思い浮かべることと思うが、森絵都さんの『カラフル』をアニメ映画にし…

鈴木清順『殺しの烙印』(1967)感想

『殺しの烙印』は、鈴木清順の監督作品である。また具流八郎という脚本家グループの最初にして最後の映画作品でもある。この作品は当時の日活社内における評判が非常に悪く、鈴木はこの作品が原因で日活を追い出されたりしている。この追放に対する学生や映…

『過程と実在』研究の展望~「決断」概念に注目してみる~

もう四年くらいホワイトヘッドを読んでいるけれども、よくわからない。わかったことといえば、世界が複雑だということくらいだと思う。しかしながら、そのよくわからないものを修論で扱わざるをえないので、とりあえずの方針をまとめておこうと思う。 まず、…

再開

新年ということで、暫く凍結していたブログを解凍していこうと思う。何も更新していなかった一年半で、結構色々なことが起こった。第一希望の院試に落ちたり、髪を切ったり、卒論を出して学部を卒業したり、なんやかんや別の院に進学したり。 ブログを更新し…

ホワイトヘッド『過程と実在』〈第32回〉2-2

延長的連続体(extensive continiuum) 延長的連続体と呼ばれる概念には、ホワイトヘッドにおける前期から中期にかけての仕事、殊に相対性理論に代表される物理学に従事していたという事情が意味を持っているらしい。しかし私には物理学の素養が著しく欠けてお…

ホワイトヘッド『過程と実在』〈第31回〉2-1-5~7

引き続き、第二部第一章から。 特殊と普遍の調停 大きすぎるテーマではあるが、ホワイトッドが実際強調する問題であるのだから仕方がない。まずホワイトヘッドによる主張をしつこい程に確認しよう。最も肝要であるアイデアは、ある現実的実質が他の現実的実…

ホワイトヘッド『過程と実在』〈第30回〉2-1-1~4

時間というのは恐ろしいもので、なんやかんや個人的な用事を片付けていたらふた月近く更新できませんでしたね。頑張ります。 今回から第二部に入って、より具体的な議論になっていくはず。特に「事実と形相(fact and form)」と題された第一章はかなり重要な…

ホワイトヘッド『過程と実在』〈第29回〉1-3-4

伝統的認識論の部分的否認と現象学 今回でようやっと第一部が終わります。ここからは夏休みも近いし少しずつペースアップを望みたいところ。今回はめちゃめちゃ短いので現象学の話も絡めてみます。 まず引用から ここで粗描された宇宙論の構図では、哲学の伝…

ホワイトヘッド『過程と実在』〈第28回〉1-3-3

連続性の生成 今回は短いのでサクッと。しかしホワイトヘッドにとっての根本的なアイデアが現れているともいえるので結構重要な箇所かもしれない。 前々回から、思弁的構図のもつ派生的諸観念について見てきたが、今回は「生成」という概念に対するホワイト…

ホワイトヘッド『過程と実在』〈第27回〉1-3-2

社会的秩序(social order) 第二節では、引き続き派生的な諸概念についての説明がなされる。今回は、殊に結合体が享受するとされる(但し必然的にではないだろうが)二つの性格についてまとめたい。 まずは「社会的秩序」からみていこう。 結合体が「社会的秩…

ホワイトヘッド『過程と実在』〈第26回〉1-3-1

欲求(apetition)と創造性の制約、永遠的客体の謎 今回から第一部の第三章に(ようやく)入ります。この章はホワイトヘッドが言うには「派生的概念(some derivative notions)」の紹介のようですが、今回扱う「欲求(apetition)」*1という概念をはじめとして重…

ホワイトヘッド『過程と実在』〈第25回〉1-2-4 まとめ回(?)決定性の謎

範疇的拘束の列挙も終わり、第二章の最後に当る第四節では、「予備的な注釈」がなされている。とはいえ、殊に前半部分はこれまでの説明の範疇に付言する形でホワイトヘッド哲学の大枠が確認される箇所となっている。 相対性と新しさへの前進 第四の説明と第…

ホワイトヘッド『過程と実在』〈第24回〉1-2-3 範疇的拘束ⅸ

自由と決定性 最後となる第九の範疇は、自由と決定性(freedom and determination)に関して以下のような説明がなされる。 各々一つの(individual)現実的実質の合生(concrescence)は、内的には決定されているものの外的には自由である。 前者の内的な決定(det…

ホワイトヘッド『過程と実在』〈第23回〉1-2-3 範疇的拘束ⅶ~ⅷ

主体的調和(subjective harmony) 主体的調和の範疇と題された第七の範疇は以下のような記述である。 概念的感じの価値づけ(valuation)は、その感じが、コントラストを持ちまた主体的指向と合致(congruent) するような【実質の】構成要素となるように適合させ…

ホワイトヘッド『過程と実在』〈第22回〉1-2-3 範疇的拘束ⅵ

変異(transumutation)とはどういうことか<謎!> 変異の範疇と題される第六の範疇は以下のように始まる。 ある同一の概念的感じが、現実世界における諸現実的実質の相互に類似する(analogous)物的感じから完全な形で(impartialy)抱握主体に派生する場合、そ…

ホワイトヘッド『過程と実在』〈第21回〉1-2-3 範疇的拘束ⅳ~ⅴ

現実的実質の「再生」と「差異」 概念的価値づけ(conceptual valuation)と題された第四の範疇は、以下の説明を付す。 各物的感じに由来する純粋な概念的感じが得られ、 この概念的感じの与件は、当の物的に感じられた現実的実質ないし結合体の限定性(definit…

ホワイトヘッド『過程と実在』〈第20回〉1-2-3 範疇的拘束ⅰ~ⅲ

主体的統一性の範疇と両立可能性 九つある範疇的拘束は、これまでの説明の範疇の内実をより具体的にまとめている。以降参照されることが多いのも、ここで挙げられる諸範疇である。 第一の範疇であるところの主体的統一性(subjective unity)の範疇は、説明の…

ホワイトヘッド『過程と実在』〈第19回〉1-2-2 説明の範疇xxv~xxvii

現実的実質の「満足(satisfaction)」 説明の範疇の列挙も終わりに差し掛かったところで、現実的実質自身の「最終相(final phase)」が語られる。以下第二十五の範疇を引用する。 現実的実質を構成する合生の過程における最終相は、一つの完全に決定された複合…

ホワイトヘッド『過程と実在』〈第18回〉1-2-2 説明の範疇xxiii,xxiv

直接性と主体性 前回見たような「機能」に関する記述から導かれて、第二十三の説明では前回触れた「リアルな内的構造」の意味が開示される。この「自己自身に関して機能すること」、すなわち自己の中に他の実質を招き入れる形で自己を形成していくことこそが…

ホワイトヘッド『過程と実在』〈第17回〉1-2-2 説明の範疇xix~xxii

「機能する(to function)」ということの意義 第十九の説明では現実的実質と永遠的客体の二つの概念こそが根本的であり、他のコントラストや命題といった実質はその二つの中間的性質を持ち、その二つが「いかに相互に結び付いているか」*1を示していることが…

ホワイトヘッド『過程と実在』〈第16回〉1-2-2 説明の範疇xviii

存在論的原理(ontological principle) 第十八の説明は最も長い。したがってここでは幾らか細分して注釈していくことになろう。ここでは最初に、「存在論的原理」なるものが導入される。*1 生成の過程が、任意の特殊な事例において従うすべての条件は、その根…

ホワイトヘッド『過程と実在』〈第15回〉1-2-2 説明の範疇xvii

諸実質の「コントラスト(contrast)」 これまでの数回に渡って、当ブログではホワイトヘッドの用いる「統一(unity)性」という概念の持ちうる多義性を見てきたということができよう。まず第一にそれはある単一の現実的実質の内におけるいわば「主体的な統一性…

ホワイトヘッド『過程と実在』〈第14回〉1-2-2 説明の範疇xv,xvi

命題(proposition)の機能 前回は、結合体という概念において考えられる、諸現実的実質(諸多性)の統一が、当の諸実質間の相互抱握と調和によってなされているのではないかという仮説を検討した。ここで問題となるであろうことは、その統一がどのように、具…