マッハ軒

ホワイトヘッドとか、鑑賞した作品についてとか

北野武『BROTHER』(2000)感想

 北野作品はまあまあ見ている。最後に見たのが確か『DOLLS』か『キッズ・リターン』のどちらかだったので、久しぶりにバイオレンスな北野作品を見たことになる。

 結論から言うと良かった。良かったけど『その男』や『ソナチネ』のほうが良かった。この二作品は終始淡々とバイオレンスしてるけど、今作は割とこってりしていた気がする。

 大体において北野作品は本当にどうしようもない感じで終わるものだと思っている。殊に北野本人が演じる役どころに関しては今作もその例外ではない。永遠に死に向かい続けている。今作の意外だったところは、北野武が演じる役「だけ」の物語ではなかったところである。さっきあげた二つの作品は、どうしたって「北野武が演じる男の」物語である印象がある。そのテーマを反復的に描き続けていたのが作品のすごみを増長していたとさえ思う。

 タイトルの通り、ある種の兄弟の物語である以上まあ一人だけの物語を意図しては居なかったんだろう。血の繋がった「兄弟」、ヤクザ社会における「兄弟」、そしてこれは解釈も入るけれど、純粋に親愛なる他者としての「兄弟」の三様が上手く描かれてたことと思う。さっき「意外だった」といったのは、この三番目の兄弟にある種の「救い」があったように描かれていることに関連する。これまで北野の役どころは、大体の出来事をクライマックスの出来事(自死なり突撃なり)でご破産にすることが多いというか殆どだったが、今作においては明確に「継承」があったと思う。

 このことによって、一般的に見て物語はなめらかに、きれいに感ぜられる。個人的にはご破産な映画も大好きだけど、まあ北野武はこういう終わり方もうまいことやってると思う。でも最後のシーンはヒヤヒヤしながら見た。基本的に人が大金を手にして車に載っていると、衝突事故で死亡してしまう気がしてならないのだ。

 他の作品との関連について。兄弟分であるヤクザが拳銃を頭にぶちこんで自死するシーンが有るのだけど、これはおそらく『ソナチネ』のあるシーンに応答する形で描かれていると思う。寺島進が両方とも出演しているのだが、『ソナチネ』では兄貴(両作品とも北野武)が戯れで頭に向けて弾の入っていない銃の引き金を引き、それを止める役を演じているのに対し、本作では自分が本当に弾を撃ち込む役へと回っている。

 また思ったのは、北野武はある種のダレ場を使うのがうまい気がするということだ。基本的なテンションは特別張り詰めているわけではないが、北野映画における死はカジュアルでその辺に転がっているようなものとして描かれる。だから場面としてはダレているはずなのに、意識外からの死の訪れを我々に警戒させるようにその画が機能しているような気がする。具体的には、北野はいい大人達が全力で遊んでいるシーンを引きで撮ることが多い気がする。『ソナチネ』ではフリスビーで、今作ではラグビーボールで遊ぶシーンが、共に海岸における印象的な画で収められている。

 展開のリズムと冷酷さは、今作においても見て取れる北野映画の骨子だと思う。でも今作は割りと丁寧な作品だった気もする。